「武器を送れ」ではなく即時停戦を

組合活動

「武器を送れ」ではなく即時停戦を

ウクライナ軍事侵攻から1か月経過

原発・居住区も攻撃

 ロシアが2月24日にウクライナへの軍事侵攻を開始してから1か月を超えました。
 各地でロシア軍とウクライナ軍との戦闘が続き、ロシア軍は首都キエフに向けて進撃を続けています。都市にミサイル攻撃が行われ、住宅地や非戦闘員も攻撃対象となっています。屋根に「子ども」と描かれた避難所(古い劇場)も爆撃されました。無誘導爆弾や燃料気化爆弾、クラスター爆弾の使用も報じられています。国外に逃れた難民は320万人を超え、避難できずに取り残されている住民は1200万人を超えると報道されています。
 ロシアとウクライナは複雑な関係の歴史がありますが「兄弟国」とも言われ、誰でも遠い親戚の1人はいるほど近い国です。その隣国同士でこのような悲惨な戦争が続いているのです。

世界大戦の記憶

 結論から述べると、「ウクライナに武器を送れ」ではなく、世界は戦争の即時停止とロシア軍は直ちに撤退せよの声をあげること、そしてロシアの兵士や労働者も含めた国際的な反戦闘争の構築を訴えたい。
 この戦争は、第一次世界大戦の歴史を強く想起します。当時、知識人や政治家の大半は「世界が滅ぶ戦争など起きるはずがない」と語り、開戦に至る過程では各国政府も相互に読み違えました。
 開戦の直接の契機となったサラエボ事件(オーストリアへの併合に反対するセルビア人青年によってオーストリア皇太子が暗殺された)で、セルビアを支援したロシアは1日限定の部分動員令を出せばオーストリアは引き下がると考えました。しかしオーストリアの同盟国ドイツは自らへの圧力と考えた…かくて史上最大の世界戦争が勃発したのです(もちろん背景など様々な検討は必要です)。
 ウクライナ戦争はどうだろうか? 当初、専門家の大半は「プーチンはポーズだけだ。戦争にはならない」と語りました。軍事侵攻の当初、プーチン(あるいはそれ以外の人も)は「戦争はすぐに終わる」と考えました。
 しかし、ウクライナの人びとの抵抗や、米国やNATOの情報・武器の提供などにより予想を裏切って戦争は激化・長期化し、やがて居住区や原発も攻撃対象となり、非戦闘員も含めて国民総動員戦の戦争になりつつあります。
 当初の「戦争反対・ノーウォー」の声は、気づけば「ロシア撃つべし。ウクライナに武器を送れ」の声に変化しています。かつての世界大戦と同じような情景が再現されているのではないかと強い危機感を覚えます。

戦争を止める力

 2つの世界戦争では、両陣営がともに「祖国を守れ。家族や同胞のために戦おう」という理屈で国民が戦争に総動員され、結果として、数千万人の生命が失われました。
 必ずしも道徳的な話がしたいわけではありません。現代の戦争の特徴は「国家総力戦」です。中世以前の騎士や武士、傭兵の戦争ではなく一般の労働者が兵士として動員され、その後方を支えるために労働者と産業が総動員されます。
 そしてその攻撃対象は労働者の生命と日常生活、産業基盤そのものなのです。
 ――「なぜ労働組合は戦争に反対するのか」、あるいは「戦争を止める力はどこにあるのか」。今回の戦争を目の当たりにして、このことを改めて考えました。
 日本の労働組合は戦後、反戦運動を大きな課題として取り組んできました。アジア・太平洋地域で侵略戦争を行い、空襲や沖縄戦、広島・長崎への原爆投下に行きついた戦争の経験からです。
 現代戦争の歴史と特徴・性格を考えた時、 労働者の権利や生活の破壊と闘うこと、そして戦争反対は1つの問題なのかとの結論に至りました。皆さん、どうでしょうか?
 戦争を止める力は、ウクライナに武器を送ることでなく、ロシアの兵士が戦争を拒否し、プーチンを打倒すること、それに連帯して世界中で即時停戦の反戦デモを行うことだと私は思います(S)。

ちば合同労組ニュース 第141号 2022年4月1日発行より