自宅で死産した双子の遺体を段ボール箱に遺棄したとして死体遺棄罪に問われたベトナム人技能実習生に対し最高裁は3月24日、女性を有罪とした1、2審判決を破棄し、無罪とする判決を出した。
女性は技能実習生として熊本県内の農園で働いていた。収入の多くを故郷の家族に送金していた。来日から約2年後、交際相手との間に子どもができたことに気づく。しかし誰にも相談できなかった。妊娠や出産を理由に実習生が解雇されて帰国に追い込まれた例を見聞きしていたからだ。日本に来るために多額の借金もしていた。
女性は、出産後に必要な日本での手続きを知らず、体調が回復したらベトナムの弔い方で埋葬するつもりだった。遺体はタオルに包んで段ボール箱に入れ、双子に付けた名前や手紙を入れた。翌日、医師に明かした。罪に問われた死体遺棄罪は、死者を悼む思いなど「社会の敬虔感情や国民の宗教感情」を害する行為を罰するというもの。
技能実習制度は30年前に始まったが、実態は日本の人手不足を補う労働力だ。実習期間は最長5年で他の企業への転職は難しく家族帯同も認められない。多額の借金をして来日する実習生も多く、賃金未払いや暴行などの諸問題も。多くの実習生が「妊娠したら仕事を辞めてもらう帰国してもらう」と言われている。人権侵害の制度と強く批判されている。
よく聴くラジオ番組で頻繁に取り上げていたこともあり大きな関心を持っていたが、判決にホッとすると同時にそれだけでは済まない思いが募る。(組合員S)