労災死傷者数、過去20年で最多に

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労災死傷者数、過去20年で最多に

技能実習生の労災発生率は全体の1・6倍

 厚生労働省が5月23日、22年1月から12月の労働災害の発生状況を公表した。

 コロナ罹患を除く労災死亡者数は774人で前年比4人減の過去最少だが、休業4日以上の死傷者数は前年比で1769人増の13万2355人となり過去20年で最多となっている。
 また千葉労働局によれば、県内の労災死傷者数の特徴として、公園・遊園地が前年比94・3%(82人)増の169人と9割増。コロナの影響で短縮していた営業時間が拡大し、遊園地で行われるショーの上演数が増加し、ダンサーの動作の反動、無理な動作による労災が目立ったとのこと。また運輸交通業は約4割増、医療保健業が3割増、飲食店25%増となった。
 厚生労働省が作成した参考資料の中にある「全国の労災死傷病者数の推移(1974年~)」をみるとリーマンショック後から増加傾向が続き、09年から22年までに約2万7000人も増加している。
 1972年の労働安全衛生法施行以来、労災は減少傾向をたどり、当時の3分の1まで減った。しかしバブル崩壊後の90年代に入って減少傾向が鈍化し、やがて増加に転じた。
 安全管理経費の削減、団塊世代の退職による安全衛生ノウハウの継承の断絶、第3次産業における労災増加などが背景にあるとの指摘もある。

高齢者と外国人

 話を22年に戻すと、高齢労働者や外国人労働者、派遣労働者の労災発生率の増加が特徴的だ。60歳以上の高齢者は雇用者全体の18・4%を占めているが、労災による死傷者数については28・7%となっている。高齢者労災の急増が全体の増加となっている。
 外国人労働者の労災発生も過去最多だ。過去10年で倍増している。
 22年の外国人労働者の死傷病者数は4808人。前年比で約5%増。外国人労働者の労災発生率2・64は全体2・32を上回る。製造業や建設業に従事する技能実習生の被災が目立つ。技能実習生の労災発生率は労働者全体の1・6倍の数値になっている。
 機械の操作方法の説明や合図などで「言葉の壁」が原因となるケースが多いようだが、技能実習生を雇用する企業が費用を厭って通訳を雇ったり安全装置の設置などが不十分な場合もある。
 被災した外国人労働者が労災申請を行うのも困難が多い。パンフレットは外国語で用意されているが、十分な知識を得たり、日本語での書類記入などハードルが高い。
 そもそも、外国人労働者については統計の数値自身も実態を反映しているかわからない。外国人労働者をめぐる労災隠しの話は多い。おそらく氷山の一角だろう。
 労災の申請を求めた外国人労働者に対して、いきなり解雇したり、在留資格の更新手続きを拒否し帰国を余儀なくされる場合もある。

安全確保の義務

 労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促すことを目的として、企業に様々な措置を取ることを求めている。
 第一に、安全衛生の責任者を置き、安全管理者や衛生管理者などの選任を義務づけ、一定規模の事業所では安全委員会や衛生委員会の設置を義務づける。産業医の制度もある。
 第二に、労働者の安全な労働環境を確保し、労働災害の発生を未然に防ぐための措置を求めている。①機械や危険物などの「危険の防止措置」、②ガスや放射線などによる「健康障害の防止措置」、③労災発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業中止させ労働者を退避させるなどの「危険が急迫した際の措置」を義務付けている。
 安全衛生教育や健康診断なども義務づけている。 
 労働基準法は、被災労働者については、企業の過失などの立証を必要としない無過失責任主義を採用し、使用者の労災補償を制度化し、具体的には、国が運営する労災保険制度を設けている。
 労災保険制度は、労働者を使用して危険な職業を営む者は、その危険が現実化して、自ら使用する者が損害を被った場合には、その経済的損失を保障すべきであるという考え方に基づいて制度設計されている。
 労災保険の給付は、労働者またはその遺族の請求によって行われる。労働基準監督署にある請求書を提出することで、労基署が必要な調査を行い、保険給付の支給(あるいは不支給)を決定する。

 ちば合同労組ニュース 第156号 2023年07月1日発行より