多発する高齢者の労災事故/高齢者が働き続けられる職場に

制度・政策

高齢者が働き続けられる職場に――多発する高齢者の労災事故

 9月19日は「敬老の日」。高齢者を敬うどころか、安い労働力で酷使する世の中になっている現実が各メディアで報道されていました。
 報道で何より衝撃を受けたのはは、労災死の4割を60歳以上が占めることです。
 厚労省調査では、高齢者の労災死亡事故が年々増加し、21年には労災死亡が年間368人で過去最悪になりました。毎日どこかで1人の高齢者が労災で殺される社会になっています。死亡事故は、30年前の約19%から約42%と2倍以上になっています。
 シルバー人材センターの問題が大きく指摘されました(『東京新聞』9月18日付)。シルバーの会員は雇用契約ではなく請負・委託契約の個人事業主の扱いで法律上の安全配慮義務がないことを理由に、労災は適用されず、自己責任として安全がまったく守られていないのです。
 シルバー人材の会員はこの10年間で2倍に増加。野外の剪定や草刈りなどリスクが高い仕事も増えています。この5年間で死亡者も含めた重篤事故が増え続けています。

生活できぬ

 背景には、高齢者が働かなくては生きていけない現実があります。高齢者の就業数は増加の一途で、現在、就業者の5人に1人が60歳以上なのです。30年前の12・3%から21・4%と約1・7倍に急増しています。
 よく「シルバー民主主義」などとしてシニア世代が優遇されていると世間では揶揄されますが、実態は違う。日本の高齢者は貧困率が高い。自己責任のもとに高齢者の貧困が放置されている。国が年金・医療を切り捨て「高齢者に働け」と言うのなら、高齢者が安心して働ける労働環境をつくることは社会的大義だ。
 ちば合同労組でも、高齢者の労働問題が山積している。定年延長や再雇用先の確保、身体に負担になる仕事の強制やパワハラとの闘いなど、少しずつだが前進している。ベテランを使い捨てる社会・会社に対して堂々と闘い、無理なく働き続けられる職場をつくることは最重要の闘いだ。

 ちば合同労組ニュース 第147号 2022年10月1日発行より