めぐり逢わせのお弁当

労働映画

映画紹介『めぐり逢わせのお弁当』

 インドに「ダッバーワーラー」と呼ばれる弁当配達システムがある。英植民地時代、英印の食文化の違いや宗教上の禁忌、カーストの問題があり、自宅で家族が調理した昼食を勤務先に届ける商売が始まった。すでに百年以上の歴史を持ち、現在でも毎日17万個以上の弁当箱が約5千人の配達員によって利用客の自宅とオフィスの間を行き来する。
 興味深いのは、ウーバーイーツと真逆な人的ネットワークによるローテクな仕組み。しかし配達ミスは600万個に1個の正確さ。各家庭から集められた弁当箱は鉄道で運ばれ最寄り駅から配送担当者に。配達員には読み書きができない者も多いが、弁当箱の色分けと数字で届け先と受取人を識別。
 映画は、誤配による偶然の出会いと交流を描く。インド第2の都市ムンバイに暮らすイラは冷え切った夫との関係を修復するため弁当の配達を依頼。しかし配達ミスで初老の会計士サージャンのもとに届く。サージャンは数年前に妻に先立たれ気力を失い気味で、間もなく早期退職する。
 イラは、夫の無反応で誤配に気づく。翌日、誤配の謝罪と完食してくれたことへの感謝の手紙を添え、再び弁当をサージャンへ届ける。サージャンは弁当の感想を書き弁当箱に。手紙のやり取りが始まる。イラは病床の父を介護する母のことや夫との関係を手紙に。サージャンは、仕事を引き継ぐ青年シャイクとの関係に戸惑いながらも孤児で苦労して仕事に就いたシャイクを次第に受け入れていく。
 夫の浮気を知り関係修復を諦めたイラは、会いたいとサージャンに提案し、待ち合わせ場所と時間を弁当箱に…。映像の色味とメロドラマな感じが良い。

 ちば合同労組ニュース 第134号 2021年9月1日発行より