軽井沢バス事故-規制緩和と闘おう

制度・政策

軽井沢バス事故
規制緩和と闘おう 闘いなくして安全なし

p0067_04_01a 15人の命が失われた軽井沢バス事故。事故発生時にハンドルを握っていた65歳の運転士は50歳で大型二種免許を取り、65歳で契約社員として入社したとのことです。
運転手は大型バスの運転経験がなく面接で「大型バスは苦手」と話しましたが、バス会社は、国が定める運転士教育も行わず、わずか研修2回だけで乗務を強い、4回目の乗務で発生した事故でした。
バス会社は、大型バスの運転経験もない高齢のドライバーに健康診断も行わずに過酷な深夜運転をさせていたのです。運転手はどんな気持ちで運転していたのか……

スキーツアーを企画した旅行会社は、国の下限(約26万7千円)を大幅に下回る19万円で発注していました。昨冬は13~14万円だったことも明らかになっています。
〈旅行会社=元請け〉〈バス会社=下請け〉という業界の構図でバス会社のダンピング(不当廉売)が横行し、コスト削減のために実際に働く運転手に過酷な業務が強いられているのです。
高速料金も上限があり、料金節約で帳尻を合わるために運転手は無理をして一般道の峠越えを選んだのではないかと指摘されています。

貸切バスは00年に規制緩和され、00年度の2864社から12年度4536社に増加。高齢化も深刻でバス運転手の平均年齢は48・5歳で6人に1人が60歳以上です。
規制緩和と外注化の構図でダンピングが横行し、労働現場では非正規雇用化や労働強化などにより無理が生じたことは明らかです。
12年の関越道バス事故では7人が死亡しました。この時も「規制緩和」「価格競争」「国土交通省の監督の甘さ」が指摘され、夜間に運転手が1人で乗務できる距離の上限が原則400㌔に短縮され、それを超える場合は2人乗務が義務づけられました。しかし再び多くの犠牲者が出る事態となりました。

安全運行を脅かす企業の存在を可能としている規制緩和政策を覆さなければ事故は減りません。ところが大手バス会社の労働組合も規制緩和に対抗できていないのが現状なのです。
規制緩和で安売り競争が激化し「新規参入してきたバス会社に勝つためは人件費を削減するしかない」という企業の攻撃に対して、ほとんどの労働組合が低賃金の非正規運転手の導入を容認しました。儲からない路線を分社化してより低賃金の下請会社へ委託することに協力しました。
例えば京成バスは90年代半ばから地域ごと路線ごとに分社化され、現在では20社以上に分社化されています。
こうしてバス運転手の全国平均賃金は瞬く間に下がっていきました。

多くの労働組合が分社化や外注化、非正規雇用に協力して「労使協調の労働組合」として組織を維持し、その見返りに組合幹部は下請会社の幹部として天下りしたのです。
事故を防ぎ労働者と利用者の生命を守るために労働組合が闘わなければその存在意義はありません。「規制緩和が原因。政府はもっと規制を」というのは簡単ですが労働組合が闘わなければ職場の状況は変わりません。

ちば合同労組ニュース 第67号(2016年2月1日発行)より