入管法改悪案の国会審議続く

制度・政策

入管法改悪案の国会審議続く

技能実習制度の存続も画策

 入管法改悪案の国会審議が始まっている。また外国人技能実習生制度の見直しの議論も有識者会議で行われている(秋に最終報告書の予定)。
 技能実習制度は30年以上も続き、「国際貢献」「技術移転」などの名目で外国人労働者を受け入れるものだ。
(写真 新潟のニット工場で働くベトナム人実習生)

 だがその実態は、最低賃金以下の低賃金や未払い、長時間労働や重労働、さらには虐待やセクハラなどが横行している。退職すれば帰国を余儀なくされ、転職も原則不可で職業選択の自由もない。妊娠等で強制退職の事例や圧力が日常的だ。これが原因で実習生の失踪も多い。世界から〝奴隷制〟と非難されている。
 技能実習制度は、外国人労働者の人身取引、奴隷労働の制度であり、制度の廃止しかありえない。
 事業協同組合や商工会議所などが「監理団体」として外国側の送り出し機関と国内の受け容れ企業をつなぎ、実習生を受入れ、働かせる。技能実習生は、現地のブローカーに約百万円の費用(借金)を支払って来日、監理団体の管理下に置かれる。
 実態は文字通りの人身売買に近いが、見直し議論においても、この監理団体などの枠組みは存続する方向だ。「廃止」論議はまったくペテンで、制度の存続が目的なのだ。
 それどころか、ビルメンテ・製造業・自動車整備・航空・介護など人手不足が深刻化している12分野で長期就労を可能とする提案が出ている。
 技能実習制度は「技術移転」「人材育成」だから「労働者」ではないと強弁し、「研修生」「実習生」と呼ぶ。実際は労働者そのものだ。もちろん雇用契約も結ばれ、日本の労働法規も適用されている。
 工場では単純労働が多く、職場と寮の往復だけで、日本語を勉強する時間もない。日本語が十分に使えず、助けを求めることも困難な場合が多い。年間7千人が職場から失踪するといわれるが、人間として扱われず転職の自由もなければ逃亡することは当然のことだ。

強制送還を強化

 入管法改定案も国会審議が始まっている。名古屋入管でのスリランカ人女性の虐殺などで批判が強まり廃案となったが、旧法案の骨格が維持されたままの再提出だ。
 法案では、①難民申請中でも3回目以降の申請者や3年以上の実刑判決を受けた人らの強制送還が可能に。②罰則付きの退去命令制度も創設する。③収容の代わりに〝支援者〟らの監理下に置く「監理制度」の導入など――
 日本は難民申請のハードルが際立って高く、母国で迫害を受ける可能性があるなど生命の危機に直面する人は何度も申請せざるを得ない。しかし3回目以降は手続き中でも送還が可能になるのだ。
 強制退去処分が出ても「帰国」を拒む外国人(政府は「送還忌避者」と呼んでいる)は昨年末時点で4233人おり、その中には日本で生まれ育った18歳未満の子どもは5%弱201人。
 難民申請者は、入管施設での収容を一時的に解く「仮釈放」の常態でも、居住する都道府県から自由に移動できず、アルバイトもできない。

 ちば合同労組ニュース 第154号 2023年05月1日発行より