京成バス2・6ストライキ(中間報告)

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「睡眠不足」「人手不足」――路線バス運転手の過酷な労働環境
嘱託社員の正社員化と不当な雇い止めの撤回を求めストライキ

――京成バス2・6ストライキ(中間報告)――

睡眠不足」「人手不足」――路線バス運転手の過酷な労働環境

嘱託社員の正社員化と不当な雇い止めの撤回を求めストライキ

――京成バス2・6ストライキ(中間報告)――

2019年2月6日 
ちば合同労働組合 

(1)やむにやまれぬストライキに全国から応援の声

 ちば合同労組は、本日午前5時から京成バスにおいて指名ストライキを行いました。今回のストライキの直接の目的は、すべての嘱託社員を正社員にすること、そして不当な雇い止めを中止することです。
 今回、何よりも訴えたいことがあります。それは全国のバス運転手、バス関連労働者の過酷な労働実態を改善することです。1週間ほど前に今回のストライキを告知して以降、全国からものすごい数の応援の声が寄せられました。少し紹介します。

・ 運転士さんの待遇は、バスの利用者が安全にバスを利用できる条件です。
・ バスを安定して存続させるためにも労働環境の改善は急務
・ 一種免許に加えて大型二種免許とっているすごい人たちなのに運転士の給料が低いから、人手不足になるんだよ、もっと給料あげなさい。
・ 以前から、路線、観光、長距離いずれのバスドライバーさんの労働に対しての賃金の低さ、拘束時間の長さは酷いものだと思っていました。特に規制緩和後からは更に。
・ 大勢の人の命を預かる仕事ですし、運転士さんが体調管理や休息をしっかりとれて、安全に運行して貰える環境作りが一番だと思います
・ 運転士さんの顔見てみなよ、疲れ切っているじゃないですか

(2)睡眠不足でハンドルを握る全国のバス運転手

今回のストライキの過程で、あるバス会社の運転手さんから直接聞いた話ですが、早朝4時から勤務し、明くる日の深夜1時まで働くこともあるそうです。21時間です。
路線バス、観光バス、どのバス会社も運転手不足の中で、基準ギリギリ、あるいはそれ以下の過酷な労働条件で働いています。早朝から深夜までの長時間拘束で不規則な働き方です。過労・睡眠不足でハンドルを握っています。しかも、過酷な勤務に見合わない低賃金の待遇で働いています。
バス運転者を含む自動車運転手の休息時間については、厚生労働省が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)を定めています。待ち時間や仮眠時間などを踏まえた労働時間管理が必要なため労働基準法とは別に定めています。
この基準では、勤務間インターバルは継続8時間以上となっています。京成バスても、ダイヤ上は8時間+数分となっているようです。午後10時ちょっと前に仕事を終えて、翌日の午前6時すぎから乗務すれば、確かにみかけの計算は8時間のインターバルが確保されています。
しかし、実際には、バス運転手は、運転が終わった後にも、給油や車内清掃、落とし物の対応などさまざまな付随業務があります。そこで、8時間以上のインターバルの確保が難しい時には、本来は運転手のIDカードで行うタイムカードの打刻を管理者が勝手に早めに行うこともあるようです。
実際には8時間を割り込むインターバルで、帰宅し食事や入浴を済ませ、翌日の出勤までにいったい何時間の睡眠が確保できるのでしょうか? 3~4時間も寝られれば御の字です。早朝乗務のために一刻も早く就寝しなければならないプレッシャーはいかほどのものでしょうか。
勤務時間についても、1日15時間を超える日、あるいは月に260時間を超える労働時間の場合もあり、さらには法律の上限である4時間連続の乗務も行われています。これは京成バスだけの話ではありません。今回のストライキを通して寄せられた声によって、京成バスグループ会社では、恐るべき労働実態が蔓延している、その一端を知ることとなりました。バス運転手にとって過労や睡眠不足がどれほど切実な問題なのか。もっと広く社会に問題提起しなければならないと痛感しています。

(3)バスの安全を守るためにも改善は急務

バス運転手の健康問題は、同時に、バスの安全と利用者の生命の問題でもあります。死者15人を出した2016年1月の軽井沢スキーバス転落事故、同じく死者7人の2012年4月の関越自動車道高速バス事故など、近年、深刻な事故が頻発しています。小泉政権からの規制緩和が転機となり、そして直接には運転手の過労などの健康問題が事故の原因となっています。
京成バスでは、年間400件もの事故が起きているそうです。過労や睡眠不足が無関係と言い切れるでしょうか。事故やミスを運転手の責任にしても、事故は減りません。

(4)物言う労働者の雇い止め=解雇

今回、雇い止めの予告後に行われた団体交渉において、会社側は、雇い止めの理由として、遅刻を指摘しています。しかし3年半の間での数回の遅刻です。そもそも正社員であれば、年1~2回の遅刻で解雇になることはとうてい考えられません。しかし、嘱託社員は期間満了の雇い止めで実質的には解雇になる。あまりに理不尽です。
しかも本当は、遅刻の原因が過酷な就労環境にあり、過労や睡眠不足が原因だと反論したことに対する報復的な雇い止めなのです。労働基準法違反のサービス残業や厚生労働省の基準違反の実態があるにもかかわらず、遅刻を理由に雇い止めすること自体が許しがたいことですが、遅刻の原因を指摘し、改善を求めたことへの報復で雇い止めするなど言語道断です。物言う労働者を見せしめ解雇は断じて認めることはできません。

(5)無期転換のがれで何年も試用期間の状態に

京成バスの人事制度は、嘱託社員からスタートし、会社が認めた者だけが正社員になる仕組みです。正社員登用は、営業所の所長の推薦で行われます。はっきりしない基準で、上司の胸先三寸で正社員になる仕組みなのです。これは実質的に試用期間が何年も続く不当な仕組みです。
労働契約法18条が定める「無期転換5年ルール」は、有期雇用契約であっても5年以上働いた者は、無条件で無期雇用になる権利が発生する法律上の制度です。これを回避するために5年を前にしての雇い止めが急増しています。東京大学などで助手などの非正規職員の数千人が雇い止めに直面したことは、皆さんもニュースなどでご存じだと思います。
無期転換ルールができた直後から、3~4回の更新で通算5年以内となるように上限を設けて、5年を超えて更新しない仕組みをつくる企業が増えています。非正規労働者の一部だけを正社員に登用して、あとは4~5年で使い捨てにする仕組みです。
これでは、非正規労働者として働く労働者は、数年間にわたり事実上の試用期間の状態に置かれ、雇い止めされないために正社員になるには、奴隷のように文句も言わずに働き続けなければなりません。これはひるがえってすべての労働者の雇用と労働条件を破壊していくことは明らかです。
今回の3年半の雇い止めは、まぎれもなく5年ルールを回避するための脱法行為です。会社に物言う労働者、労働条件の改善を要求する労働者を「正社員にしない」という迂回路を使って雇い止めして、実質的な解雇をする。こんなことは絶対に許されません。

(6)運転士道=精神論ではなく睡眠不足の解消が必要

深刻な運転手不足の中で、京成バスは、労働条件の改善によって運転手不足を解消するのではなく、元社⾧が提唱する「運転士道塾」でのりきろうとしています。武士道精神にならって「運転士に誇りとプロ意識を持たせる」と言うのです。
武士道精神を叩き込めば、離職が減って運転手不足が解消する――これが京成バスの経営方針なのです。このような精神論で睡眠不足や過労がなくなるはずはありません。これは会社の奴隷をつくる洗脳教育です。根本的に発想が間違っています。ものすごい怒りと批判の声が出ています。

・ 「運転士道」というオカルト的な思想で完璧超人に仕立てる等危機感無い京成バスにストライキで鉄槌を下して欲しい。
・ 私の職場でもこの運転士道という精神論でなんとかする施策はおかしいだろと話題
・ 「武士道」 要するに劣悪・過酷な職場環境でも「高楊枝」を加えてガマンしろということか。

もっとも「安全を脅かす奴に容赦しないのが真の運転士道ってもんです」という意見もありました。これはその通りかもしれません。

(7)地域・路線ごとの分社化が雇用と安全を破壊

千葉県では、ほとんどの路線バスを京成グループが独占していますが、京成電鉄グループは、1995年にフラワーバスを作って以降、地域ごとに分社化を進め、その後、バス部門そのものが京成電鉄から分離されています。ちばグリーンバス・千葉交通・京成タウンバス・千葉中央バス・京成トランジットバス・成田空港交通・京成バスシステム・千葉海浜交通・千葉内陸バス・船橋新京成バス・東京ベイシティ交通・ちばフラワーバス・ちばシティバス……ものすごい数のグループ会社に分割されました。
赤字路線や不採算路線は子会社に回して、グループ会社間で競争させるような状況の中で、グループバス会社の運転手の労働条件はさらに過酷な状況に陥っています。
私たちは、京成バスグループの運転手の労働条件の改善についても、今回のストライキを通して訴えたいと考えています。私たちは分社化による雇用破壊に反対します。

(8)労働組合の力で私たちの状況を変える

 今回のストライキには、全国から、信じられないほど多くの応援の声を頂きました。もし京成バスの全路線が止まるストライキが決行されれば、確実に全国のバス労働者の職場環境が改善される転機になったであろうと思います。
 県民の多くが通勤や通学で京成バスを利用しています。自分や家族の乗るバスが睡眠時間3、4時間でハンドルを握っていることに危機感を持たない人はいないと思います。そして全国のバス運転手がそうした困難な状況にあることを多くの人は知っています。「バス運転手の健康とバスの安全を守るためのストライキは必要だ」と多くの人が思っているのです。
昨年末の東京都練馬区の図書館司書のストライキや、東京の私立高の教員ストライキなど、やむにやまれぬストライキに対して世論の圧倒的な支持が集まっています。
海を越えたアメリカのロサンゼルスでも今年1月、公立学校の教員3万人が、公立学校の民営化に反対し、賃上げ、クラスの少人数化、養護教員やカウンセラー、図書館司書の増員、教育予算増などを要求して、30年ぶりとなるストライキを行いました。児童・生徒約50万人に影響が及ぶストライキでしたが、生徒たちや保護者の圧倒的な支持を得て要求の多くを実現しました。
バス運転手をめぐる状況も、アメリカの教員ストライキに似ている状況にあると思います。ストライキへの支持の声を紹介します。

・ 京成バス利用者は、会社に「不便だ。要求をはやく飲め」とやったほうがよい。まちがっても労組に抗議しちゃダメ。あなたの安全の問題でもあるから。
・ ストライキが行われるが運転士とお客さんの安全を考えると、運休になっても仕方ないことやし、他のバス会社に広がる可能性ある。路線バスは鉄道と同じ公共交通機関の仲間やから。
・ ストライキ、古臭い手法と言われるかもしれませんが、社員の意見を伝えることは大事なことだと思います。
・ 京成バスさんは全営業所でストライキを起こされた方がよろしいかと思います。
・ ストライキ断固支持!長時間無償労働に苦しめられ続けている学校労働者も続け! クリスマスケーキや恵方巻のノルマを押しつけられているコンビニ労働者も立ち上がれ!
・ 声を上げられない労働者のためにもがんばって下さい。

ちば合同労働組合は小さな労働組合ですが、全国のバス労働者の就労環境を変えるために闘います。今回のストライキは、全国の皆さんが力を与えて下さりました。ストライキと労働組合が復権する小さなきっかけになれば、こんなにうれしいことはありません。多くの労働者にとって、自分の職場を変える選択肢として労働組合が見えていないのが現実です。今回のストライキも「一寸の虫にも五分の魂」とでもいうようなささやかな闘いですが、それでも今回、皆さんの応援でここまで闘うことができました。労働組合の可能性を少しでも示したいと思います。
全国からの応援、本当にありがとうございました。私たちは、バス運転手の健康と路線バスの安全を守るために闘います。過労と睡眠不足の職場を変えるためにきちんと声をあげることができる職場に変えたいと思います。
まずは当該組合員の雇い止めを撤回させるために全力を尽くして闘います。団体交渉や第二波ストライキも準備中です。京成バスへの抗議電話、カンパや激励メッセージなどを寄せてください。今後とも暖かいご理解とご支援をお願いします。

以上