G7サミット 広島の名で核抑止力を正当化

その他

G7サミット 広島の名で核抑止力を正当化

ゼ大統領も参加し戦争拡大を宣言

 広島市内で5月19~21日、G7サミットが開催されました。原爆資料館への訪問やゼレンスキー大統領の来日などで、市内は厳戒態勢となり原爆ドームのある平和公園も数日間ほぼ封鎖状態になりました。また核兵器保有を前提とし、その抑止力を正当化した「広島ビジョン」の発表には多くの被爆者が怒りと失望の声を上げました。
 さらには交戦中の当事国指導者(ゼ大統領)が参加し、各国の武器供与リストが広げられ、反転攻勢が宣言されました。まるで第2次大戦時のヤルタ会談(英チャーチル、米ルーズベルト、ソ連スターリンが参加し、ソ連の対日参戦や戦後体制を構想)のような演出でした。
 もはや建前(たてまえ)的な「平和」の装いもなくなり、ただ憎悪と敵意を増幅し、戦争の拡大だけが追求されました。
 「武器供与や制裁では絶対に戦争は止められない」――当初はこうしたごく常識的な主張もできない雰囲気でしたが、サミット本番を迎え、地元の市民や被爆者は一斉に疑問と批判の声を上げました。反対集会やデモ行進も行われました。
 被爆者団体が「ヒロシマの名で核抑止力と戦争が正当化された。被爆者への裏切りだ。サミットは失敗だ」と批判したのは当然だと思います。

『西部戦線異状なし』

 少し話題が変わりますが、『西部戦線異状なし』という第一次世界大戦を描いた有名な反戦映画があります。
 ドイツの小さな町の学校で教師が教壇から「祖国のために戦え。君たちは英雄となれ」と生徒に吹き込み、感化された生徒たちが入隊を志願、意気揚々と西部戦線に赴くが、地獄のような塹壕戦で級友が一人また一人と死ぬ。
 主人公のパウルが殺したフランス兵の胸元からは妻と子の写真が。彼の職業は印刷工でした。彼らは互いに勇敢な兵士でも敵味方でもなく、同じ境遇・立場にある者同士が殺し合っていたのです。
 第一次大戦ではわずか数百㍍の陣地を取るために数百万人の兵士が生命を落としました。しかし一人ひとりの生命は顧みられることなく、戦争指導者たちは「個人の事情は関係ない。国の勝利がすべてだ」と言ったのです。
 まったく同じことを世界は再び強制しているのではないのだろうか? 「あの時、戦争に反対すべきだった」という瞬間がもう目の前に来ていると感じてなりません。
 欺瞞・偽善を見破り、違う意見を言い、行動することは確かに勇気がいります。しかし、いまこそ「戦争反対」「即時停戦」「武器供与をやめよ」――世界の人びとは歩調を合わせて行動すべきと思う。

戦争・難民の21世紀

 そもそもG7は世界で何をやってきたのでしょうか?
 21世紀に限定しても、9・11事件後、米ブッシュ政権は「大量破壊兵器の脅威」を理由にイラクへの先制攻撃を開始した(大量破壊兵器の証拠は最後まで見つからず)。
 今この瞬間も、イスラエルはパレスチナ人から土地を奪い、巨大な壁で分断・封鎖し、住宅街を爆撃している。シリアでは内戦が10年も続き、人口の半数が避難民です。ロシアがアサド大統領に加担しても米国は容認してきた。
 イエメン紛争では「世界最悪の人道危機」が進行形で起きている。サウジ軍の空爆を支援しているのは米軍です。
 米英ロなどにより中央アジアや中東、アフリカ各地で内戦や混乱は拡大し、数百万の命が失われ、何千万人もの難民が生み出されてきた。武器供与や制裁が平和をもたらしたことは歴史で一度もない。

東アジアの戦争危機

 いま世界は、過去の大戦と大恐慌の時代を彷彿とさせる状況に陥っています。一握りの者に富が集中し、格差と不平等が拡大し、戦争や内戦、紛争が世界を覆っています。
 2つの世界大戦の主要舞台となった欧州の人々が直面する問題に、東アジアの私たちも問われている。隣国への敵意や憎悪、排外主義が強められ、隣国を理由に大軍拡と戦争準備を行なっているのが日本ではないのだろうか。(T)

ニュース 第155号 2023年06月1日発行より