労働映画

労働映画

炭坑

映画紹介『炭坑』 1931年の独仏合作映画。1906年に仏北部で実際に起きた20世紀最大の炭坑事故(犠牲者1099人)がモデルですが、映画は、第1次大戦後の仏独の複雑な国民感情を背景に、炭坑は独仏国境地帯の設定となっており、ドイツ人炭坑夫たちが国境を越えて救援に向かうストーリーです。 映画の公開時期は、ナチスが政権を取るわずか2年前。第1次大戦の敗戦国ドイツは巨額の賠償金を課せられ、大恐慌が直撃し...
労働映画

あの日のオルガン

映画紹介『あの日のオルガン』 保育園を丸ごと集団疎開させる決断した東京・戸越保育園の保母(保育士)と園児たちを描いた実話を映画化。小学生の疎開は見聞きするが、保育園の疎開は投稿一覧初めて聞いた。 東京にも戦火が迫る1944年、戸越保育園は園児を空襲から守るため親元から遠く離れた疎開先を探していた。最初は幼い子と離れることに反発した親たちも「せめて子どもだけでも生き延びて欲しい」と我が子を託す。 よ...
労働映画

ハリエット

映画紹介『ハリエット』 南北戦争の時代、800人を超える黒人奴隷解放を成し遂げたハリエット・タブマンの半生を描いた映画。当時、米国社会には「奴隷黒人」と「自由黒人」が存在し、自由黒人は身分証明書を持ち歩き、奴隷黒人は1人の人間として扱われない時代でした。 メリーランド州で黒人奴隷である両親から生まれたミンティは6歳から働き始め心身を虐げられて生きてきました。奴隷主が死に、奴隷はバラバラに売り払われ...
労働映画

いつでも夢を

映画紹介『いつでも夢を』 高度経済成長が始まった頃の東京下町の工業地帯を舞台にした青春物語。勝利(浜田光夫)は、仕事に失敗し父親が家出し、中学を出てすぐ森田製作所に就職、夜は定時制高校に通う。看護師ひかる(吉永小百合)は、幼い頃に両親をなくし、兄も病気で失い貧乏医院の三原医師の養女となって昼は看護師、夜は定時制。留次(橋幸夫)は、森田製作所の資材を運送する日の出貨物の新米運転手だ。 勝利は、貧しい...
労働映画

遠い一本の道

映画紹介『遠い一本の道』 1977年に公開された左幸子監督・製作・主演の映画。マル生運動が吹き荒れる北海道の国鉄職場が舞台。 室蘭本線と石勝線の交差する鉄道の町・追分で保線区員として30年働く滝ノ上市蔵(井川比佐志)が妻の里子(左幸子)と共に功績賞を受けるために札幌へ向かう場面から始まる。かつては鉄道に勤めていれば安泰と言われたが、狭い官舎に住む滝ノ上一家の暮らし向きは苦しく、職場では機械化・合理...
労働映画

めぐり逢わせのお弁当

映画紹介『めぐり逢わせのお弁当』 インドに「ダッバーワーラー」と呼ばれる弁当配達システムがある。英植民地時代、英印の食文化の違いや宗教上の禁忌、カーストの問題があり、自宅で家族が調理した昼食を勤務先に届ける商売が始まった。すでに百年以上の歴史を持ち、現在でも毎日17万個以上の弁当箱が約5千人の配達員によって利用客の自宅とオフィスの間を行き来する。 興味深いのは、ウーバーイーツと真逆な人的ネットワー...
労働映画

鉄道運転士の花束

映画紹介『鉄道運転士の花束』 2019年日本公開のセルビア・クロアチアの映画。原題は『運転士の日記』。人身事故が避けて通れない鉄道運転士の日常と誇り、人生の悲哀をブラックユーモアで描く人情映画だ。賛否両論ある作品。 冒頭、鉄道事故から始まる。そして主人公である鉄道運転士イリヤの独白。「親父と俺は53人の人間を殺した。男が40人、女が13人。じいさんの分も加えれば66人殺したことになる。裁かれたこと...
労働映画

好きにならずにいられない

映画紹介『好きにならずにいられない』 2015年公開のアイスランド・デンマーク映画。主人公フーシは航空貨物の搬入やカーゴ運転を行う空港地上職。43歳独身、巨漢で髪も薄い。ラジコンや戦場ジオラマが趣味のオタクだ。寡黙で他人とは少し距離感があり職場ではいじめも。でも料理や日曜大工は得意で、気の合う友人も。 ある日、母とその彼氏がダンス教室に勝手に申し込む、しぶしぶ出かけるが、そこでシェヴンに出会い惹か...
労働映画

幸せなひとりぼっち

映画紹介『幸せなひとりぼっち』 2015年公開のスウェーデン映画。今年一番の印象に残った映画です。コメディタッチなのですが実に感動的な作品です。観ててシンドイ場面もありますが、お薦め。 妻ソーニャを半年前に亡くしたオーヴェは、鉄道操車場で働く59歳の整備工。いつも不機嫌かつ几帳面で口うるさい偏屈なオヤジ。毎朝、団地を巡回してゴミの出し方や犬の散歩、車の駐車位置などをチェック。店で気に入らないことが...
労働映画

天使のいる図書館

映画紹介『天使のいる図書館』 地元に就職した新人司書さくら(小芝風花)が主人公。図書館司書が主人公の映画は初めて観た。なじみのない人も多いと思うが、図書館にはレファレンスサービスがある。利用者の調べものや探しものを手伝いする。 過度の合理的思考で他人とのコミュニケーションが苦手なさくらは、「王子様の出てくる絵本」をリクエストする女の子に「イギリスですか、それともオランダ?」と尋ね返し、「泣ける本は...
労働映画

にあんちゃん

映画紹介『にあんちゃん』 監督・今村昌平、主演・長門裕之の1959年公開の映画。53年の佐賀県の炭鉱地帯が舞台。3歳で母を亡くし、9歳の時にストライキのさなかに父を失った安本末子の視点から、在日朝鮮人の4兄弟姉妹が懸命に生きる姿を描く。 父の死後、朝鮮人ゆえに正社員となれず炭鉱の臨時雇いとなる長兄。わずかな稼ぎで毎日の糧にも事欠く極貧の生活。その長兄も会社の合理化策による首切りで失業。4人は炭住を...
労働映画

パラサイト 半地下の家族

映画紹介『パラサイト半地下の家族』 半地下に暮らす全員が失業中の貧しいキム一家。大学受験に落ち続け浪人中の息子ギウはエリート大学生の友人から「僕の代わりに家庭教師をしないか?」と持ち掛けられる。ギウの向かった先はIT企業社長パク一家の高台の大豪邸。 ギウは言葉巧みにパク家の信頼を得て、同じく美大浪人中の妹ギジョンを家庭教師として紹介。やがて兄妹は同家の運転手や家政婦を追い出し、父ギテクを運転手とし...
労働映画

明日は咲こう花咲こう

映画紹介『明日は咲こう花咲こう』 吉永小百合主演の1965年の映画。主人公ひろ子は保健婦として長野県の山村に向かう。今の名称は「保健師」ですが、病気予防・健康増進など公衆衛生活動を行う地域看護の専門家だ。「都会育ちのひろ子に僻地の保健婦は無理」と恋人に言われ、「そんなことない」と啖呵(たんか)を切る。 村には井戸もなく川の水を飲料と炊事・洗濯で共同使用、子どもの発熱には新興宗教のお札を食べさせる頑...
労働映画

カンパニー・メン

映画紹介『カンパニー・メン』 2008年のリーマンショック後に制作された映画。 ボストンに本社を構える総合企業GTX社は、株価を維持するため赤字の造船部門と鉄道部門を統合する大リストラ計画を断行する。解雇リストには販売部長の30代後半のエリート社員ボビー(ベン・アフレック)の名前も。突然の解雇で段ボールを抱えて途方に暮れるボビー。すぐ再就職できると意気込むが現実は厳しく自分を必要とする会社は現れな...
労働映画

ピザ!

映画紹介『ピザ!』 南インドの都市チェンナイのスラム街に暮らす兄弟。父は刑務所、母も定職がなくその日暮らし。兄弟は貨物列車からこぼれ落ちた石炭を拾うのが日課。食事も事欠き、子どもたちが遊ぶ空き地のカラスの巣から卵を時々失敬している。その空き地がつぶされて街に初めてのピザ店ができる。食べたことないピザに釘付けとなる兄弟。しかし、それは家族の1月の生活費よりも高いのだ。 兄弟は憧れのピザを食べる金を稼...
労働映画

恋のしずく

映画紹介『恋のしずく』 日本三大銘醸地の1つとして知られる広島県東広島市・西条が舞台の日本酒造りを物語にした映画。東京の農業大学で醸造学を学びワインソムリエを目指す大学生が、フランス留学に必要な単位をとるために西条の老舗酒造で嫌々ながらも研修を受けることに。病に伏す蔵元と父親に反発する息子、厳格な杜氏や職人のもとで実習を開始するが慣れない作業に失敗ばかり……。主人公の大学生を川栄李奈、蔵元を大杉連...